人びとは何を考えているか?—植林における楽観主義の発見

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Manuel R. Guariguata 「森林と環境」プログラム・主任研究員

熱帯の天然林からの木材の収穫がこの数十年のうちに生産ピークを迎えると考えられているなか、将来の木材需要を満たすための植林によって占められる地域が、さまざまな地域で同時並行的に増加している。国連食糧農業機構(FAO)によると、2000年から2010年までの間に、植林地は毎年約500万ヘクタールずつ拡大している。多くの熱帯諸国で、大規模植林、および、小規模植林の拡大が進行中である。多くの事例において、植林地は、数十年間にわたって森林が伐採されてきた場所や、自然には森林が成立しない場所に作られてきた。熱帯林消失は、ほぼいつもきまってネガティブに受け止められているが、樹木が無い状態から、多くの樹木が存在する状態へと変わる場合にはどうであろうか。植林に関する非常に多くの研究は、環境問題に焦点を当ててきたが、常に人びとによって良く受け止められるとは限らない、こうした新しい生態系の出現に対する人びとの認識を扱った研究は非常に少ない。南アメリカにおける最近の二つの研究はこの問題にいくらかの光を照射している。

ウルグアイでは、地方の草地での牛の飼育から、非郷土種のマツやユーカリの植林への土地利用の変化がここ20年のうちに、劇的に進行した。Forest Policy and Economics誌に掲載された論文で、Vihervaaraら(2012)は、インタビューを通じて、植林地近くに暮らす田園地域(countryside)、および町の住民の(植林に対する)意識を評価した。インタビューを受けた者の70パーセントが、植林地の拡大を肯定的にとらえ、森林産業に好意的な態度を持っていた。ジェンダー間で認識に大きな差があり、男性は女性よりも、植林をより好ましいものとして見ていた(85パーセント対63パーセント)。植林の環境への影響に関する関心は別れ、47パーセントは、水と土壌への影響を心配していたが、41パーセントは、少し心配しているのみか、まったく心配してはいなかった。田園地域に暮らす人びとの1/3が、景観への影響を、かなり否定的に、あるいは極めて否定的にとらえていた。その一方で、町に暮らす人びとの約半数が、それと同じ認識を持っていた。サンプルはコミュニティでランダムに選ばれているが、この研究は、インタビューを受けた人びとが植林活動に関係しているか否かについて報告していない。このことは、結果にいくらかのバイアスを持ち込んでいるかもしれない。

1960年代、チリでは、天然林からの木材伐採を代替する方法として非郷土種のマツ、Pinus radiataの植林が進められた。Revista Chilena de Historia Natural 誌に公表された、(植林に対する)人びとの意識に関する研究において、Püschel-Hoeneisen and Simonetti (2012)は、チリの人びとは、自然生態系を最も好ましいものとして捉え、外来のマツの植林に必ずしも賛成していないものの、植林が保全的価値を持ち得ると認識している、と報告している。さらに、これらの植林地に由来する林産物が生物多様性保全に貢献していることが証明されれば、人びとはそれら林産物により多くを支払う意思があることを調査は示している。実際、(アンケート調査の)回答者の90パーセントが、下草を伴う外来マツの植林地—より高い生物多様性を擁する—の景観を、下草を伴わない景観よりも好んだ。ウルグアイにおける研究と対照的に、農村地域の人びとは、植林が生物多様性に対する脅威であるかどうかを問われた際に、はっきりした意見を持っていなかった。一方、サンティアゴの都市居住者は、マツの植林を必ずしも環境にやさしくないものとみなしてはいなかった。

なぜこれらふたつの研究が重要なのか?過去50年の間に大規模植林が拡大するなか、それらはしばしば悪評を買ってきた。いくつかの植林地は、最適管理手法や利用可能な科学的知識に注意を払わず、また、社会的関心を無視して、間違った場所に間違った植物原料を用いて造成されてきた。いくつかの国では、企業の植林によって、地域住民が移住させられてきた。しかし、食糧、燃料、繊維の需要は、今後も成長し続け、(他の生産物と)競合する—これらは多くの場合熱帯林被覆を犠牲にして生産される。これらの需要は、環境的・社会的なセーフガードが尊重されるならば単位土地当たりの生産性が高い、集約的に管理された植林地の設置をよしとする議論に道を開いている。

植林における優れた取り組み(good practice)に関する自主規範の適用は、社会的・環境的影響を緩和するのに確かに役立つ。しかし、この間欠けていたのは、植林地やその産物に対する社会的支持や消費者の選好(これらはしばしば管理ガイドラインや認証基準に明示されてこなかった問題)について理解することを目的とした研究である。ウルグアイとチリの研究報告は、予備的で、地域特異的で、異なった仮定と研究手法に基づいたものである。しかし、それらは、大規模植林地の造成と管理に対する社会の見方を、より信頼でき正当な方法で説明する方法について、研究者、管理者、政策決定者たちの幅広い関心を喚起するものであろう。熱帯林からの非持続的な木材の収穫を減らすことに植林が十分に寄与することを望むなら、このことはますます重要性を帯びることになるだろう。

[日本語訳:笹岡正俊(CIFOR) m.sasaoka@cgiar.org]

 

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