農村地域の生計と貧困緩和における森林収入の役割を理解する:中国における新たな洞察

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Louis Putzel「森林と環境」プログラム・シニアサイエンティスト

世界の約4分の1の人口が生計のために森林資源に依存しているなか、最も貧しい人びとの暮らしを森林がいかに改善できるかを理解することは、経済発展における重要なトピックのひとつになっている。最近出版されたWorld Developmentの論文でNicholas Hogarthたちは、中国南部の貧しい僻陬山岳地域の農村世帯が、植林地を管理することで生計の30パーセント以上を賄っていることを明らかにしている。1994年以来、中国政府は、森林被覆と農村世帯に配分・管理される林地を増やしながら森林を基盤とする換金作物生産を促進するための重要な諸施策を組み込んだ、国家貧困削減計画に取り組んできた。「退耕還林」を含む同計画の林業重点事業(Priority Forestry Programs)を立ち上げてからの15年間、中国は、新規植林(afforestation)と、貧困削減に向けた林産物市場振興における巨大な、そして、前例の無い知識と経験の源泉となった。

Hogarthがフィールドワークを実施した广西(Guangxi)州ティアンリン郡では、調査対象者の75パーセントが、調査時に先立つ5年間のうちに、彼らの暮らし向きが改善されたと認識していた。それは、ひとつには、林産物・農産物市場の改善、および、国の収入レベルの全般的な上昇によるものであった。ティアンリンは、土地の80パーセントが森林として分類され、調査時点において人口のほぼ半数が一日当たり1ドル以下で生活している地域である。調査が行われた225世帯のあいだでは、それぞれ全収入の約10パーセントを占めていた作物や商売と比較し、最も大きな現金収入源(20パーセント以上)になっていたのは林産物販売であった。森林に関わる収入は、すべての収入レベルにある世帯にとって重要だったが、最も貧しい世帯では、森林から得られる収入の割合が、豊かな世帯よりも有意に高かった。つまり、貧しい世帯ほど、森林からの収入がより重要になっていたのである。

こうしたデータを検討するなかで、Hogarthらは、不平等な土地所有、農外労働へのアクセス、市場(参入の)障壁と価格操作が、貧者が市場、特に木材市場から十分な利益を得るのを妨げている、ということを明らかにした。

土地配分に関する中国の国家政策は、より大きな家族に多くの土地を配分することを意図していた。しかし、現実には、裕福な世帯が多くの土地とより少ない家族構成員を持っている。絶対額で見て、上位20%の富裕家族は、下位20%の貧困家族よりも3倍も多く森林から現金を得ている。サンプルとなった住民間の非常に異なった機会アクセスを反映して、彼らは収入の最も多くの部分を商業活動から得ている。データは、ティアンリンにおける経済的不平等が、森林と農地の不平等な配分と明らかに結びついていることを示している。つまり家族構成員あたりの土地をより多く持つ人びとは、家畜生産などお金になる活動に従事しているが、多くの世帯は、取り残され、貧しい暮らしを続けているのである。

15年間という時間は、変化を判定し、中国の林業および貧困緩和施策の最初の初期の結果を評価するのに十分だが、さらに為されるべきことが残っている。Hogarthによると、ティアンリンのような地域や、農村における貧困が依然として強固に根をおろしているその他の中国の遠隔山岳地域で貧者の福祉向上をはかるには、さらに多くの研究と開発事業が必要である。ひとたび立木が伐採時期に達すれば、より多くの経済的機会が木材市場からもたらされることになるだろう。森林がもたらすサービスに対する支払いプログラムのより適切な目標設定、および、そうしたプログラムから得られる便益を地方エリートが盗用・独占するのを減らす努力は、低所得世帯の生計を改善するだろう。また土地を分かち合うことも同様だ。Hogarthらは、低所得世帯の生計改善は、必ずしも新たな土地配分を通じて達成され得るものではなく、おそらく、中国の他地域で試みられてきたような、土地所有規模に基づく地域世帯間補償スキームを通じて達成され得ると述べている(Gutierrez-Rodriguez et al. 2012)。

この研究は、国際林業研究センター(CIFOR)の貧困と環境ネットワーク(PEN)が世界の24ヵ国で実施した研究のひとつである。本研究は、世界の森林・林業研究において鍵となる主題に新たな光を照射するものだ。すなわち、農村地域の貧者に林地を分配することにより、いかに農村の貧困を削減し、全体として森林の生産性を高めることに貢献できるか、という問題である。本研究は、貧困から農民を抜け出させる上で森林が重要な役割を果たし得ることを立証している。土地は不平等に配分され、取り残された家族もいるが、ティアンリンにおける家族経営の森林は、それが非常に小規模なものであっても、農村の経済発展の重要な牽引役であった。

[日本語訳:笹岡正俊(CIFOR) m.sasaoka@cgiar.org]

 

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Further reading

Hogarth, N.J., Belcher, B., Campbell, B. and Stacey, N. (2012). The role of forest-related income in household economies and rural livelihoods in the border region of southern China. World Development, http://dx.doi.org/10.1016/j.worlddev.2012.10.010 http://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0305750X12002549