By Terry Sunderland
国際林業研究センター・上級研究員
従来の保全の方法は、いわゆる「要塞型保全」、すなわち、人間活動を厳格にコントロール、あるいは制限する地域の設定を伴うものであった。(地域住民の利用の)排除に伴う社会的・経済的コストは、より大きな、グローバルな利益である生物多様性保護のために必要だとみなす、保護地域設定を通じた生物多様性保全を強く擁護する人たちが存在する。しかし、こうした主張は、地域コミュニティに対する保護地域のインパクトに関する激しく対立する論争を引き起こしてきた。そうした議論では、人権、社会的公正、経済的権利の剥奪といった問題に焦点があてられることが多かった。効果的な生物多様性保全を達成するという点で、人びとを彼らの土地から排除するトレードオフや、社会的・経済的コストは、容認できるものであろうか。経験的に言って、そうした問いへの答えは「否」である。しかし、それを示すデータはどこにあるのだろうか?
Porter-Bolland らによって書かれた最近の論文は、多様な保有、利益分配、そして、ガバナンスのスキームの下で多様な(土地・資源)利用が行われている「コミュニティ管理林(community-managed forests)」と比較しつつ、厳正な保護地域(IUCNの保護地域カテゴリーにおけるI~IVに該当)が持つ効果を検討している。彼らはその論文において、「効果」を長期にわたる森林被覆の変化、と定義している。
土地被覆の変化が環境の十全性を示す大雑把な指標であることを著者たちは認めているが、森林被覆の変化とその要因は、特にリモートセンシング技術がより広く活用でき、アクセス可能になるにつれ、土地利用が生物多様性保全に与える影響を示す強力な指標になりつつある。
Porter-Bolland らは、ラテンアメリカ、アフリカ、そしてアジアの三つの主要な熱帯地域をカバーした文献から集められた事例研究を比較している。彼らの発見は大変興味深いものであり、ローカルレベルにおけるより強大なルール制定の自律性が、より良い森林管理と生計上の便益と結びついていることを示した他の科学者の初期の発見を補強するものであった。
Porter-Bolland らは、コミュニティにより管理された森林のほうが概して保護地域より、年森林減少率が低く、森林被覆の減少率の変動が少ないことを示す明確な証拠を提供している。また、保護地域は、おそらく、生物多様性保全のための最も効果的手段では無く、また、疑いなく、最も社会的に公平な、あるいは、経済的に利点のある手段ではないと結論づけている。
コミュニティ基盤型の森林管理それ自体、近年、その相対的な効果について、吟味の対象になってきた。そのことを考慮に入れると、上記の事実は何に起因しているのだろうか?論文で引用されている保護地域の多く(90 %)は、政府によって管理されている。保全を支持する政府は、しばしば限られた資金と能力に特徴づけられ、それが、不十分な法的強制の原因になっている。保護地域の規則に地域住民が従わないことは、当たり前のこととなっており、多くの保護地域が何らかの不法占拠の問題を抱えている。
さらに、分析に用いられた事例の多くは、強力な社会運動によって、より“人びとに優しい”保有とガバナンスのしくみや、以前議論の余地はあるが、より効果的なコミュニティによる自然資源の管理が促進されてきたラテンアメリカの事例である。多くの研究者と実務家は、よりレジリエントで(抵抗安定性が高く)、確固とした保全戦略は、地域住民の社会的・経済的必要と同時に保有権や地域の能力を認める一定の土地利用を含むべきであるということにずいぶん前から気づいていた。しかし、保護地域の数や規模が年々増えるなか、人間のニーズや、土地利用計画のプロセスに人びとの権利を組み込むことは、しばしば考慮に入れられなかった。
REDD+ プロジェクトが始まるなか、計画から実施にいたる自然資源管理のプロセスに地域住民を巻き込むことは、生物多様性保全と社会的公正のトレードオフをできるだけ少なくし、望ましい成果を効果的にもたらすための基本原則になるであろう。
[日本語訳:笹岡正俊(CIFOR) m.sasaoka@cgiar.org ]
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