誰がために多様性

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今週、マレーシアのクアラルンプールには、第7回生物 多様性 条約締約国会議とその関連集会のため、数千人の専門家が集まって、生物多様性を保全するため、また生物多様性から得られる利益を平等に配分するための議論 がなされています。生物多様性保全というと、人間にとって魅力的な動物の保護、もしくは食用作物や薬用植物といった遺伝子資源の保全に目が向きがちです。 そして、食物、生薬、燃料、伝統儀式の材料など、熱帯林地域で暮らす村人達の生活と密な関わりをもつ森林動植物の多様性については、無視がちなのです。し かし、そこで暮らしている村人達の声を聞かずして、その地域の生物多様性保全を期待するのは間違いです。

 CIFORのDoug Sheilと彼の研究チームは、インドネシア、東カリマンタン州マリナウでおこなった調査から、地域住民の意向を反映した生物多様性保全計画を立案するた めの方法を、「地域住民にとっての生物多様性:インドネシア領ボルネオ島の事例」としてとりまとめました。Doug達は、7つの集落に滞在して、村人達が 動植物をどのように利用しているのか、どこでどの種類を採集しているのかを調べるとともに、そして動植物を持続的に利用するために必要な行動について提案 しています。

 村人達が食べている肉のほとんどは狩りで捕まえた動物で、肉を狩りに頼る傾向は奥地に行くほど高まります。村人達はイノシ シを好んで食べるのです が、伐採を受けた森ではイノシシが少なくなるために、サルをはじめとする保護の対象とされている動物も狩って食べています。伐採によって住処の森を追われ たイノシシは、村人達の畑に現れることがよくあります。また、塩泉や果樹が多数残っている放棄された村は、多数の動物が集まるところになっています。

  インドネシアでは、森林を伐採してから5年間は、商用樹木種以外の下生えやツル植物を刈り払うことを奨励しています。そして、雑草扱いされて刈ら れてしまう植物の中には、村人にとって大切な種類も含まれていることがよくあります。また、土壌浸食を少なくするため、伐採道路は尾根沿いにつくるよう規 定されています。しかし、飢饉の年に村人達が最後に頼る食料、尾根に生えるサゴヤシの一種は、伐採道路を作ることで殺されてしまうのです。一方で、川の近 くでの伐採により、果実を餌にしている魚が減少したり、川の水が濁って清流を好む魚がいなくなったこともあります。

 マリナウの村人達にとって、ツバメの巣は大きな現金収入源ですので、村人達はツバメの巣ができる洞窟のまわりの森を大切にしています。そして、洞窟がある石灰岩が多い土地は、そこにしか生えない植物があることも知られています。

  Doug達がみてきた村人の日々の暮らしに思いをはせてみると、生物多様性の保全というのが、動物園で観客を惹きつける動物や、ガンの特効薬を見 つけるためだけではすまないと、気づいて頂けるのではないでしょうか? 今週クアラルンプールで開かれている会議では、森林で暮らしている人々にとっての 生物多様性も忘れられずに議論されていることを祈ります。

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Further reading

今回、紹介した出版物 “Local People’s Priorities for Biodiversity: Examples form for Forests of Indonesian Borneo” の無料コピーを希望される方は、Ms. Indah Susilanasariにご連絡下さい。

質問やコメントは、Dr. Doug Sheil宛にお願いします。

英語での質問・コメントの送付に不安がある方は、CIFORインターンシップの倉光宏明に、ご連絡頂ければお手伝いさせて頂きます。なお、質問およびコメントについては、今回紹介した論文をご一読の上でお願いします。

今回のPOLEXの翻訳は、森林総合研究所東北支所岡輝樹さんに助けてもらいました。