自分の仕事の中で最悪なものは何か尋ねられると、すぐに県の森林官は答えました「パトロールに出かけることです」。装備は貧弱で、危険な目にあうかも知れず、地域社会からは嫌われていて、特に発展途上国では、森林での法施行に当たる彼の気持ちは森林官としておそらくごく普通のものでしょう。政府上部と地域社会からの十分な支援がない限り、森林犯罪を阻止しようとする彼らの努力は報われず、効果もありません。
Luca Tacconiらは、「違法伐採:法施行、生計と木材貿易」の中で、森林官の窮状を浮かび上がらせる違法伐採の原因をいくつも見出しました。しばしば地域社会は違法伐採を有害だとか不法行為だとかとは受け取っておらず、しかも地方政府がそれを支持することすらあります。例えば、地方分権後のインドネシアでは、中央政府が違法と判断する木材伐採に対して県庁は許可を与え、合法と違法の境目があいまいになりました。
また、林業当局に違法伐採対策の資源や能力が実際に不足している場合もありますが、Tacconiによれば政府には森林犯罪対策を進めるために優先すべき多くの課題があります。政府職員と民間業者が結託して国の木材資源を盗む、いわゆる「馴れ合い」汚職を根絶するのは特に困難です。この問題に対する政府の強い取り組みがなければ、森林犯罪に対する林業当局の能力強化を図っても効果がないとTacconiは主張しています。
William Magrathらは、違法伐採が個々の森林管理者にはどうしようもない社会的政治的要因に左右されることは認めながらも、森林管理単位レベルで木材窃盗を防止する取り組みを強化する意義を述べています。彼らは「木材窃盗防止:森林管理者のためのセキュリティ入門」の中で、森林犯罪はかなり予測できるのである程度までは防止できると述べています。窃盗の潜在的原因が複雑だからといって、戸締りをしないのは馬鹿げています。この報告書には、森林管理者が直面する様々な状況に応用できる色々な実践的方法が載せられています。
窃盗の危機管理をどのように森林計画と施業に位置づけるかについて、著者らは資産防衛と産業補償の分野から概念を借りて説明しています。成功への鍵は、何が「合法」で何が「違法」なのかの明確さと、森林のセキュリティを増す方向に地域社会のやる気を出してもらうよう彼らと関わっていくことです。アクセス道路の封鎖や廃止などの簡単な方法のほか、「社会的フェンス」も森林への犯罪者の不法侵入を防ぐ効果があります。また、当局が警戒すべき木材取引詐欺の「赤旗(=警告サイン)」リストも報告書に載せられています。
それでは、Tacconiらがまとめた森林犯罪の複雑な潜在的原因に対処する観点から、森林での法施行に力を入れることには意味があるのでしょうか?Magrathは報告書の最終章で、森林のセキュリティはよい統治のための公共政策から始まるものであると述べ、さらに、開発援助の対象には違法伐採防止に積極的に取り組む準備のできた政府を選ぶべきだと述べています。われらの森林官が仕事をするためには、政府の関与と使える道具の両方が必要なのです。意志のあるところに、道は拓けます。
(日本語訳 鷹尾 元(CIFOR) g.takao@cgiar.org)
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Further reading
今回御紹介した文献は:
Luca Tacconi. 2007. "Illegal Logging and the Future of the Forest". Chapter 12 in Illegal Logging: Law Enforcement, Livelihoods and the Timber Trade. The Earthscan Forest Library.
本書の情報はこちらから http://www.earthscan.co.uk/?tabid=1434 。また、本書の第12章"Illegal Logging and the Future of the Forest"のPDFファイルをご希望の方は、Ms. Rizka Taranika <r.taranita@cgiar.org> にご連絡ください。
Magrath, William B. ; Grandalski, Richard L. ; Stuckey, Gerald L. ; Vikanes, Garry B. ; Wilkinson, Graham R. 2007. Timber theft prevention: introduction to security for forest managers. The World Bank.
http://go.worldbank.org/HFMJLD3R40 、著者連絡先:wmagrath@worldbank.org