ガーナの野生動物肉の話を紹介した前回のPOLEX の原題 は「Have your animals and eat them too(邦題、野生生物を守れ、そして食べよ)」でした。POLEXの著者は、うま い表題を思いついたと得意になっていましたが、彼のオリジナルでは無いことに気付 きました(注)。
一年ほど前に、野生生物保護協会の John Robinson と Liz Bennettから、「Having your wildlife and eating it too: an analysis of hunting sustainability across tropical ecosystems (野生動物を保持し、そしてまた食べよ:熱帯生態系に おける狩猟の持続性に関する解析)」という論文を受け取っていたのです。しかし、前 回のPOLEXを執筆したときには、印象的な言い回しは覚えていたものの、論文そのもの についてはすっかり忘れていました。
それはそ れとして、RobinsonとBennettの論文は、前回紹介したガーナの事例がより 広い範囲でなりたつことを示しています。RobinsonとBennettは、野生生物が狩猟によ り絶滅の危機にさらされているところを知るために、アフリカ、アジア、中南米の熱 帯地域からの研究報告を調べました。そして、乾燥林、(湿潤)草原、休閑林地、牧草 地と森林が混ざっているところでの狩猟に比べ、熱帯多雨林での狩猟は持続的ではな いと結論しています。
このことには、次のような理由 があります。アンテロープ(羚羊)、シカそしてその 他の有蹄動物は肉が多く、開けた草原をすみかとしています。これらの動物は比較的 早く繁殖するので、毎年15-20%程度の個体を採集しても、絶滅の心配はありません。 特に中南米で顕著なのですが、開けたところには身体の大きい齧歯類が多数いて、非 常に早く増加します。
それとは対照的に、動物の 食べ物の大半が樹上にある熱帯多雨林では、サルやナマ ケモノが最も重要な獲物ですが、齧歯類や有蹄類に比べると肉は少なく、繁殖も遅い のです。熱帯多雨林では、多くの樹木が動物に食べられるのを避けるため葉に化学物 質をためています。熱帯地域で年間に500ミリを超える雨が降るところの草原は、1ヘ クタールあたり15~20トンの動物を養うことができます。しかし、熱帯雨林が1ヘクター ルあたり3トンを超える動物を養うことはほとんどありません。
理屈では、伐採や移動耕作のために森林を切り開くことで、動物の現存量や利用で きる肉の量を、増やすことができることになります。シカやアンテロープの個体数は、 伐採により一時的に減少するものの、その後急速に増加するという研究例があります。 しかし短絡的な結論は禁物です。伐採に引き続き、常畑化や商業目的の狩猟といった 野生動物の絶滅につながる活動がおこなわれ、動物の個体数を急激に減少させること がよくあるからです。そして、より大きな動物や、より繁殖が遅い動物が、絶滅の危 機にさらされます。
このように、世界の熱帯域全体でも、前回のPOLEXで紹介した西アフリカの事例と同 じことが言えるのです。狩猟が生態系に与える影響は、獲物となる動物やその生息地 により、大きく異なります。野生肉に関する政策はそれを考慮しなければなりません。
注: 多分、haveの「食べる」という意味とeatを引っかけたのだと思われます。今回の 表題「Hunting for Plagiarizers」は直訳すると、「Plagiarizers(他人の言葉を自分 の言葉のように語る者)狩り」で、狩りの対象は著者自身です。
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Further reading
今回紹介した論文は、
Robinson, J.G. and Bennett, E.L. 2004. Having your wildlife and eating it too: an analysis of hunting sustainability across tropical ecosystems. Animal Conservation 7: 397-408. です。無料電子コピーを希望される方は、Dr. Lauren Terwilliger <lterwilliger@wcs.org>宛、ご連絡下さい。コメントや質問は、Dr. John Robinson <wildcons@aol.com> とDr. Elizabeth Bennett <lizwcs@pd.jaring.my>に、お送り下 さい。